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2007年1月14日 (日)

ツボカビ症

 先週金曜日に、ツボカビ症に感染したカエルが日本でも初めて発見されたと報道された。ペット用に輸入されているカエルから日本にツボカビ菌が持ち込まれたようだという。当方は、自然がまだ豊富だった頃に生息していたガマガエルが成育し続けられるようにしている。平成元年に、FRP製の水槽を庭に埋け、池を用意したところ、周囲に産卵場所がなくなってしまったカエルが毎年産卵に来るようになった。ペットとしているわけではなく、放し飼いである。産卵時期と、特に暑い夏場を除くと、カエルが池に入ることもほとんどない。カエルを放し飼いにしてはいけないとか、カエルの入った水を流してはいけない等の規制が生じると大きな影響を受ける。また、自然の状態でのカエルの成育が難しくなる。そのようにならないことを願うばかりである。

ツボカビ症に関しては、オーストラリア政府の環境保護省などの政府関連サイトに的確な解説があり、参考になった。要約すると、

 高度300400mの熱帯雨林地帯に生息するカエルが極端に減少し、種類によっては絶滅した。なぜ、このような急激な流行と死亡が生じたか、本当のところは解明されていない。両生類は、皮膚を通じて空気や水を摂取していることから、環境の変化に敏感で、炭鉱のガスを検出するカナリアと同じ働きを環境の変化に対して行ってくれるという。このことから、最近の環境変化によって影響を受け、大発生につながった可能性が考えられる。ただし、寒冷な季節に大流行するようで、地球温暖化とは直接関連していないのかもしれない。

 以下、とりあえず勉強した結果の、オーストラリア政府のファクトシート等は以下のとおりである。

オーストラリア政府 環境保護省

 ツボカビ症は、世界中の両生類に影響を与える感染症である。この病気はツボカビ菌(Batrachochytrium dendrobatidis)というカビによって発症し、その致死率は両生類の種類によって、それほど高くないものから100%にまでわたる。この病気により、この15年間に、カエルの個体数の激減と、種によっては絶滅が生じた。しかし、この病気の原因や、生命系全体に与える影響は未解明である。

歴史

 カエルの大量死が最初に発見されたのは1993年、クイーンズランド州においてであった。ツボカビ症はツボカビ菌によって引き起こされ、両生類が感染する感染性が極めて高い病気である。その後の研究によって、このカビ菌(fungus)はオーストラリア全土にわたって見られ、1973年にはオーストラリア国内に侵入していた。この菌はアフリカ、アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドおよびオセアニアで発見されている。

 オーストラリア、パナマ及びニュージ-ランドでは、この菌は突然現れ、カエルの数の激減と同時に拡大したと当初は考えられていた。しかし、このカビは天然に存在したものが、最近伝染力が強くなった、あるいは環境中の量が増加した、または宿主側の病気に対する抵抗力が低下したものと考えられる。この菌はオーストラリアの4地域で認められる。東海岸地区、アデレード、西オーストラリア州の南西地区及びキンバリーであるが、現在ではオーストラリア全土に広がったものと考えられる。

生態

 ツボカビ菌は、水中あるいは土中に生息し、植物や昆虫に寄生しているものもある。無性生殖し、水中を泳ぎまわる胞子を持つ。脊椎動物の中では両生類にしか感染しない。カエルは、他の感染動物から排出された胞子を含む水と接触した皮膚から、この病気に感染するものと考えられる。

 このカビ菌に関しては、寄生宿主の死亡原因を含め、なぜ寄生宿主が絶滅してもカビ菌が生存できるのか?蔓延する手段は何か等、ツボカビ菌と野生動物の発症に関しては不明な点が多い。カビ菌と環境との相互作用が重要であることが知られている。たとえばオーストラリアの高地に生息していたカエルの生息数は極度に減少、あるいは絶滅してしまったが、これには、地球温暖化、紫外線被爆量の増加などの環境ストレスによって抵抗力が低下したことが原因していると推測される。しかしながら、このカビとその他の要因との間の相互作用については良く分かっていない。

影響

 カビはカエルの皮膚の表面層に侵入し、ケラチン層を破壊する。これによって、なぜカエルが死亡するかは実際のところ良く分かっていない。カビは毒素を放出するが、これをカエルが皮膚を通して吸収、経口摂取(飲む)、皮膚呼吸を通じた摂取が行われるが、この要因は水分摂取と呼吸活動(生命維持活動)に直接関連している。

 カエルの集団の中には死亡率が小さいものがあったが、別の集団では100%の死亡率となった。生存した個体は保菌者となると考えられている。感染しやすく、感染するとすぐに死亡してしまう種もあれば、感染しにくい種もある。カビ菌に接触した後の治療法も分かっていない。

 カビ菌はオーストラリアのカエルの大量死を招いたが、この菌が生存数減少の主因であるとも言い切れない。たとえば、西オーストラリアの南西地区の種の中では、この病気が15年間も活発であったにもかかわらず、黄腹カエル(Geocinia vitellina)と緑オガエル、金色オガエル(Litoria moorei)の個体数に影響を与えなかった。

 それにもかかわらず、sharp-snouted day frog(Taudactylus acutirostris)の絶滅はツボカビの感染が原因であると主張する研究者がいる。また、少なくとも4種類のその他のカエルの生存数の減少(water frog(Litoria nannotics)common mistfrog(Litoria rheocola)spotted tree frog(Litoria spenceri))がこのカビと関係があると主張されている。

抑制

 ツボカビ症は最近になって原因が分かった疾病で、その感染抑制法については良く分かっていない。しかし、感染抑制に当たっては、的確な診断と監視が必要であることは明らかだ。この脅威を軽減する手段を開発中であるが、通常の検疫と移送の手順の徹底化がその内容となる。具体的には、発生が確認された地域から別の地域に両生類を移動したり放すことを規制すること、両生類の輸入を禁止することである。両生類がツボカビ症に感染しやすくした環境要因を解明し、対処法を研究することもこの病気の脅威を軽減することに役立つであろう。

研究

 CSIROの科学者たちは、ツボカビ症感染を効果的に防止するための抗真菌剤を試験している。野生のオタマジャクシを捕獲し、抗真菌剤で処置した後、カエルになるまでの間ツボカビ菌のいない環境で飼育する。その後、これらの若いカエルを、オタマジャクシとして捕獲した場所に戻した。

 この間、科学者たちはこの研究活動によってツボカビ菌を拡散させていないことを確認し、政府はオーストラリアへの両生類の持ち込みと州間移動の際に厳格な検疫を課した。

 ツボカビ菌の起源と拡散、それがカエルの個体数減少へ与える影響、また動物がこの菌に感染しやすくなった環境要因についての研究は継続して行われている。

国家問題としてのオーストラリア政府の取り組み

 ツボカビ菌が両生類へ感染することによってツボカビ症を発症することは、オーストラリア連邦環境保護並びに生物保存法1999(EPBC法)の下に、重大脅威として計上された。EPBC法の下、オーストラリア政府は「両生類のツボカビ菌感染によって引き起こされるツボカビ症の脅威軽減計画」を関係する州と地域と協議して策定しつつある。この計画は、ツボカビ症が与える自然界のカエルへの影響を軽減させることを目的としている。脅威軽減計画は、ツボカビ症に対処する上で利用可能なすべての資源を最大限利用するという枠組みで策定されたものである。オーストラリア政府は、この国家的問題に対処するため、各州や地域との作業を継続している。

ジェームズ・クック大学の公衆衛生・熱帯医学科のリック・スペア博士の解説である。

ツボカビ症

1.ツボカビ症は、Batrachochytrium dendrobatidisによって両生類に発生する病気である

2.発見以来急速に感染を広げている病気で、オーストラリアではBデンドロバティディスは、それぞれ発見年度の異なる4箇所で確認されている。(1)東海岸地区ではクイーンズランド州南東地区とニューサウスウェールズ州北部で1970年代末(最初の発見報告は197812月)に発見され、北と南に感染を広げた。(2)西オーストラリア州の南西地区では、1985年に最初に発見され、その後南、北および西に拡散した。(3)サウス・オーストラリア州のアデレード地域で、最初の発見は1996年、(4)キンバリーの北西地域で、最初の例は1999年に発見された。なお、キンバリー地区は20032月現在、他の感染地域から隔離された発現であるかの確認はできていない(20032月補遺)。

生態

3.Bデンドロバティディスは、宿主の選択性が弱く、おそらくすべての両生類に感染し、地球上のすべての生物に影響を与えるであろう。

4.Bデンドロバティディスは、遊走子によって伝染するが、そのためには水が媒体として必要である。

5.Bデンドロバティディスは、脱水状態に対抗できる休眠モードは持ち合わせていないだろう。

6.遊走子と遊走子嚢は乾燥状態で死滅する。

7.Bデンドロバティディスは、人類の活動に影響を受けずに自然の状態で移動しているであろう。平均移動距離は年間100キロメートルである。

8.ある地域で一旦Bデンドロバティディスが検出されたなら、その地域全体で検出されるであろう。

9.実験室では、Bデンドロバティディスは両生類なしに成長と増殖が可能である。

10.       Bデンドロバティディスは、自然の状態で両生類なしに水溜りで増殖できるものと考えられ、自然環境が独立した宿主となり得る。

病原性

11.Bデンドロバティディスは、両生類に取り付くと、発症率と死亡率が高い病原体となる。

12.オタマジャクシは感染するが、明らかな症状を発現するまでに至らない。

 明らかな臨床的被害を受けないというのは、特に、米国からの種において不正確であろう。口盤への症状が報告されている(20032月補遺)。

13.オタマジャクシの動きは、地域環境への拡散を促している。

14.Bデンドロバティディスは、特定の野生の両生類に高い発症率と死亡率を与える病原体である。

15.Bデンドロバティディスに感染した両生類がなぜ死亡するかは不明である。

16.宿主の種類によってツボカビ症の重篤性が異なる。

17. Bデンドロバティディスの菌株により、宿主ごとに感染しやすいものがある。

18.環境因子がツボカビ症の重篤性に影響を与える。

19.低気温がツボカビ症の重篤性を増大させるが、その他の環境因子についてはまだ分かっていない。

20. Bデンドロバティディスに感染した両生類の自然治癒の可能性については分かっていない。

診断と発見

21. 臨床的徴候は若年と成体の両者の両生類で:神経学的徴候(異常な姿勢―後肢が脇腹からはみ出している、正向反射の低下あるいは喪失、異常行動―夜行性カエルが陽光下にたたずんでいる、逃走反射の喪失、手で触れた際にまとわり付いてくる)、表皮が厚くなる(皮膚表面が荒れているのがわずかに観察できる、腐肉の形成)、突然死 が認められる。

22. ツボカビ症診断の最良の材料は皮膚で、特に足の最外表皮層である。

23. 現在通常行われている両生類のツボカビ症診断は(生体解剖、組織学、培養)で検出感度が低い。

24. 酵素免疫化学法は検出感度と特異性を改善するであろう。ベルガーらの2002年の論文では、ポリクローナル抗血清を組織切片に用いる酵素免疫化学手法によって、検出感度と特異性を向上できたと報告している(20032月補遺)。

25. ポリクローナル抗体に基づく皮膚を用いたELISA手法によって、検出感度が向上でき、モノクローナル抗体に基づく手法で特異性を向上できた。

26. モノクローナル抗体を用いて遊走子を検出する手法は、遊走子に特異的であるため、異なる環境下の水溜りにおける感染力の計算を可能にするであろう。そして、伝染病学と博物学の分野に広範囲の知識を与えるであろう。

27. モノクローナル抗体を用いて遊走子を検出する手法は、遊走子に特異的であるため、Bデンドロバティディスが自然環境下で増殖する能力の理解を助け、水溜りそのものが基質となり得るかに答えを出せる可能性がある。

28. 分類法の分子生物学的研究によって、Bデンドロバティディス内の変動が極めて広範囲であることが分かり、種や菌株に関する結論を得る前に、多くの基礎研究を行う必要がある。

この記述は正しくない。いくつかの大陸のBデンドロバティディスの分離株内の変動は小さい。モアハウスらの2003年の論文参照。

治療/殺菌

29. 抗真菌剤は培養されたBデンドロバティディスを殺菌可能だ。しかし、感染したオタマジャクシ、幼年と成体のカエルで治癒の期間が異なる。

30. フルコナゾールとイトラコナゾールがもっとも期待できる。ただし、効果的な治療法の確立が必要である。

31. 食塩水と一定レベルの熱(温度)はオタマジャクシに悪影響を与えないため、この処方を単独で与えるべきか、殺菌剤と合わせて処方すべきかを評価する必要がある。

ジョンソンらが2003年に発表した論文では、濃度10%以下の食塩水は、遊走子を殺菌する上で効果がない(20032月補遺)。

32. エチルアルコール、グルタルアルデヒド、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)は効果的な殺菌剤である。

33. 人工的な紫外線照明も効果的な殺菌剤であろう。

 ジョンソンらの2003年の論文では、紫外線は遊走子の殺菌に無効である。

疫学

34. 両生類へのすべての伝染性疾病を正確に理解する上で重要な考え方は、感染と発病/死亡を区別することである。

35. Bデンドロバティディスは、特定の国、あるいは特定の国内の特定地域にのみ存在しているように見える。しかし、検出されている場所は、どれだけしっかり探したかが問題となる

36. オーストラリアでは、Bデンドロバティディスは7州中6州に存在し、存在しないのは北部特別地域のみである。

37. オーストラリアにおける現在及び過去のBデンドロバティディスの分布に関してはさらに研究する必要がある。

38. 病害対策の観点でBデンドロバティディスは、(1)オーストラリアでは1970年代にクイーンズランド州南東部とニューサウスウェールズ州北部に出現し、北と南に広がった。(2)1985年に西オーストラリア州南西部に出現し、南、北および西に広がった。(3)1996年以前のあるときにアデレード地域に出現した。そして(4)1999年にキンバリー地域に出現した。

39. 新たな発生地域の中心部は、Bデンドロバティディスのそれまでの発生地域と隣接しておらず、感染した両生類が移動したか、感染した両生類が直近に接触した汚染された水が移動した結果である可能性が高い。

40. 両生類は(1)商品、苗、建築資材などの移動とともに、意図せず移動する、(2)注意深く行われた商動物の取引とともに移動する、(3)活動範囲を拡大する種が移動することによる拡散の危険性がある。

41. 3件の低品質な調査結果から推定された移動率は、年間100キロメートルである。理論的な計算から、この推定値は的を得ている可能性が示されている。

42. 野生の両生類におけるツボカビ症の流行は、オーストラリア、エクアドル、ニュージーランド、中央アメリカ、スペインとアメリカ合衆国で発生している。

43. オーストラリアでは、この流行がまだ続くものと思われる。

44. オーストラリアの地域によっては、流行に季節依存性が強く認められる。寒冷月では感染数と死亡数が増加する。また、年ごとの変動も大きい。

安全対策

45. Bデンドロバティディスの生菌を扱う者は、両生類に対して伝染力が極めて強い病原菌を扱っていることを自覚し、実験室の菌種が野外に放出されることを防止するために、基準にかなった生物学的封じ込め手段を講じる必要がある。

46. ツボカビ菌は、摂氏31度以上では増殖できないため、人間の皮膚には感染しない。

47. 人間と両生類が関係する各種の行動(触る等)によって、Bデンドロバティディスを伝染させる危険性があることから、選択しうる最良の手法について定量化する必要がある。

48. 商業的に繁殖されている両生類が、自然環境をBデンドロバティディスによって大規模汚染させる危険性を軽減させる手法を開発する必要がある。

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